中味汁


「中味」とは豚の中身、つまり内臓のことです。主に胃腸部分を鰹ダシでお汁にしたものです。現地では、盆正月などには欠かせないご馳走です。お袋の味の代表格ですね。すごく手間のかかる料理なんです。

その手間の最たるものは、「中味」の下ごしらえです。まず、小麦粉や塩、酢などをつけて力を入れてこすり、水ですすぐ作業を3回ほど繰り返します。その後沸騰した湯に入れ、ゆで汁を捨てながら、「中味」が白くなるまで下煮を繰り返します。この一連の作業だけで2〜3時間はかかります。ここを怠ると、臭みが残ってしまうんですね。あとは椎茸やこんにゃくとともに鰹ダシで煮て、お汁に。すり下ろした生姜、小ネギを散らして出来上がりです。丹念な下ごしらえのおかげで、臓物独特の臭みは消え、お出汁のきいた上品な味わいになります。

今は下ごしらえ済みの「中味」や、レトルトの完成品も出回っています。かなりお手軽になってきました。とはいえ、時間をかけて作った中味汁の味は絶品です。沖縄では、「鳴声以外は全部食べる」といわれるほど利用度の高い「豚」。中でも内臓(モツ)は、良質なたんぱく質が豊富で脂肪分も少なく、鉄分、ビタミンA・D、ミネラル類の宝庫です。ゆえにモツ料理は、飽食で栄養バランスが偏りがちな現代人にとっては、理想の食べ物なんですね。